街路樹
随分、二人の仲も知れた頃だった。
お前はドアを蹴り開けて、毎日と訪ねた。
考えちゃだめさ。答えてごらんよ。
街角の紙くずの上、YESとNOを重ねた。
積まれたタイヤの上で、夢中になった。
このアルバムタイトルにもなっている歌。
海王が感じる若い尾崎と大人になった尾崎の曲の違いは
どこに視点があるのかだと思う。
最初の方は、自分が見て憎んだ大人の街に対して。
『誕生』は、昔自分が憎んだ大人になった自分を、今度は街が自分を見て。
『放熱の証』は、ただ、自分の中の感情を。
この『街路樹』は、行き急いで答えを探して、出ない答えに苦悩してるわけじゃない。
社会から爪弾きにされて足掻いているわけでもない。
あふれ出す感情をぶつけてるわけでもない。
言うなれば「街の中にいる自分」と「自分の見た街の姿」が妙にマッチしている感じ。
だからなんだか達観しているし、落ち着いている。
壊れそうなくらいの熱狂も無ければ、絶望もない。
この歌自体は平凡なもので、街の中での二人をただ描いているだけの詩。
物悲しげなバラード。
誰に何を言うでもなく、ただ思った事を素直に恋人にうちあけるような
透明な歌だ。
歌詞の意味をしっかりと噛み締めて歌わないと、ただの平凡な歌になる。