この世は矛盾で出来ている。
何一つとして正当な真実はなく、矛盾しない理などもまた存在しない。
正義と悪、愛と憎、自由と束縛、真実と虚偽、抑圧と解放、自と他。
何を信ずるべきことか、幾分空費した時間を嘆く我が目の淡い光のほど、それは誰にも知りえない。
矛盾と言うのは、ずるい。
そうでなければならないのに、そうではない。辻褄が合わない。理解が出来ない。
自分自身が何で、ドコにいて、今はいつなのか。その答えは、ない。
ない事なんてない。けれどもないものはない。どこかおかしい。
自分は自分で、ここにいて、確かに今、存在している。
そんなのは自分と言う存在を存在足らしめる為の自己完結に過ぎないのではないか。
誰もがそうして、自分と言う他人を納得させて背中合わせに生きていくのではないか。
自分は、自分ではないかもしれない。
ここは、どこか知らない場所かもしれない。
今は、自分が作り出した幻想の一部なのかもしれない。
誰が闘っているのだろうか。
何のために?
どうやって?
いつからいつまで・・?
わからない。
この世は矛盾で出来ている。
確かに有り得た現実の鈍痛にも似た重心に心惹かれ彷徨う哀しい自我の境界は、誰も知らない。
知らない事は沢山ある。
知らない事の方が、沢山ある。
知らない事は多すぎる。
自分が自分である事に疑問を感じる。
なぜ?
なにが、なぜ?
自分の心に浮かぶ疑問符さえも新たなる疑問符を生む分母に過ぎない。
藁も掴めぬ愚かな存在が、どうしてこの世を彷徨い生き抜く事が出来ようか。
大海に放り込まれた蟻がもがく。
我が生を有らん限り実感しようと、もがいている。
死ねばそれまで。
それは果たして、生と呼べるのだろうか。
そんな事は知らない。
矛盾と言うのは、ずるい。
なんでも矛盾のせいにできる。
なんでも作れる。
だから、この世は矛盾で出来ている。
自分はここにいて、今を感じる。
ここは僕の部屋で、自分はキーボードを叩く。
重いまぶたを堪えながら、意味もない文字列を打ち込む。
それは僕だ。
それに違いは無い。
でもそれは間違いなく僕なのだが、それは、僕なのだろうか。
僕は僕でしかない。
僕は僕でしか有り得ない。
他人が僕では有り得ないし、僕は他人では有り得ない。
だから、矛盾している。
僕は、他人だ。
他人なのに僕だ。
僕が僕でいられる為の時間は本当に少ない。
この世の矛盾は何も教えてはくれない。
大いなる宇宙に生み出されたちっぽけな星。
その中の小さな大陸に産まれた、もっと小さな僕。
蟻が死ぬのと僕が死ぬのと、どちらが早いのだろうか。
その答えは知らないけれど、生ある限りもがきたい。
蟻にとり人間にとり、そうする事しか出来ないのだから。
助けを乞う事もない。絶望に打ちひしがれる事もない。満足感も何も無い。
あるのは実感だけ。ただ、もがいている。
僕が僕であるために。