第零ミッション
まずは普通にPCを起動し、アーマード・コアを本体にセットして準備完了。
飽きるほど見ても飽きないオープニングはささっと飛ばしいざニューゲームだ。
このゲームはどんなゲーム?という人にまず説明しなければならないだろう。
いわゆるロボゲーである。
胴体(コア)を中心として頭、腕、足、ジェネレータ、ブースター、照準機器、そして武器を好きな様に組み合わせて独自の機体を作り上げ、数々のミッションを行う。この世界ではそのロボットの事をアーマード・コア(AC)と呼称している。
ミッションの内容は様々で、破壊活動から拠点防衛、物資の搬入や又はその阻止。千差万別な状況でACの性能を最大限に発揮し、リスクに応じた額の報酬を貰って食っていく。そういう事を生業として生活するのが「レイヴン」と呼ばれる傭兵達だ。主人公はそのレイヴンとなってミッションをクリアしてくというわけやね。
ニューゲームを始めると名前を入力する画面になった。椎名 唯と名づけ戦場に躍り出てもらおう。
第一ミッション
予定通りに事は進んでいる。新規登録申請から間もなく通達された手紙にはこう書かれていた。
「レイヴンを目指す者に対し、我々は唯一の試験を行わせてもらう。与えられた機体で戦闘を行い、生き残る事。その瞬間から君はレイヴンだ。それでは、頑張ってくれたまえ。」
場所に赴くと出向いたのは巨大な鉄の塊だった。
組織の幹部でも出てくるのかと思ったら、辺りは人気もなく素朴な兵装が施されたACが一機あるだけだ。
乗り込むと機体の足とドッキングされた床が独りでに動き出し、俺とこの機体をどこかへと運ぶ。
暗い道だった。床の静かな制動音と機体のカメラを通して眼前に広がる闇だけが俺の知覚を支配する。
数秒後に重力が消え、打って変わって明るい部屋へと落下させられた。
明るさに慣れない目を手で覆っていると、機体のスピーカーから機械的な音声が流れてきた。
「システム キドウ」
これが戦闘開始の合図。
目の前には二機のMTが待ち構えているのが見えた。
MTとはACが開発される前にこの世界の主力だった機械の事で、単純な操作で莫大な作業を行えるこの機械が世界中で生産されたのは、懐かしい話じゃない。だがACという高性能且つ汎用多用途型のロボットの出現で、既に第一線に使われる事はほとんどなくなった者達だ。
しかし、ACがMTより遥かに勝ったとされるのは機体部位や武装を換装する事によって得られる多様性であって、決して全てに於いて勝っているわけではない。
そう、戦闘だけとなれば、それに特化したMTとACでは然程違いはしない。
敵の武装は機体中心部にある固定ライフルだけのようだ。
自分の機体が持っている銃を撃ちながら接近し、左手に内臓されているレーザーブレードで「足」を斬れば終わりだろう。
敵の銃弾が機体の左右を通り過ぎていくのを視界に捕らえながらも接近する。
が、敵はブースターを吹かし上空へと舞い上がった。
「やはり思い通りにはさせて貰えないかっ・・。」
コックピットで呻いている間に、真横から銃弾を喰らう。
そう、敵は二匹いるのだ。
咄嗟に武器を肩に装備されているミサイルへと入れ替える。
ACは右手に中距離武器、左手に超近距離用ブレード。そして両肩には主に遠距離用の高火力武器や索敵用のレーダーが装備できるアタッチメントがある。パイロットはそれらを駆使し、状況に応じた武器を使い分けなければならない。
敵の機体が空中を「飛翔」している間にミサイルを数発打ち込み、隙を見て真下に向かってダッシュをかけさせる。ACだろうがMTだろうが、上空に飛び続けることはできない。重い機体をジェネレータ容量の許す限りブースターの推力で無理に持ち上げるのが限界だ。
そして、その機構上無理な体勢にならないと真下に攻撃できないように設計されているのが、この時代の機体郡でもある。
白兵戦に於ける弱点は「頭上」「背後」そして「影」だ。
敵の落下地点に先回りし、まだ着地していない敵に向かって自分の機体をジャンプさせながら斬り付けると、MTは炎上し灰になった。
もう一機に向かって今度は真正面からブースターをフルに使い、懐に飛び込む。
機体の各所に敵のライフルの銃弾が直撃するが、そんな程度の損傷は厭わない。ACの装甲はそこまでヤワじゃない。
ライフルを制射しているにも関わらず突進してくるACを前に動きをなくしたMTは、次の瞬間は先ほどの機体と同じように炎を巻き上げながら地面に膝を突いた。
監視されていたのか、直後に通信が入った。
『・・・なるほど、それなりの力はあるようだ。認めよう、君の力を。今この瞬間から君はレイヴンだ。』
第二ミッション
さて、ようやくレイヴンとして活動する事ができるようになった。ここまでは予定通りだ。
レイヴンと言う傭兵が何故この世界で通用するのか。それは、各地がまだ完全に『統治』されているわけではないからに他ならない。
人は愚かな戦争によって世界を破滅に導いた。人は活動する場所を地上から地下世界へと移し、地下都市を建設して生活している。そこで重要なのは各地が「国」ではなく「ガード」と呼ばれる治安隊によって護られ、「企業」と言う組織が覇権争いをしているという事だ。
時にはライバル企業の計画を潰し自社に利益が生まれるようにするため、高額の報酬を提示してレイヴンを雇い破壊工作を依頼することもある。
人類を地上から消滅させた戦争は「大破壊」と呼ばれた。
それ以降数々の企業が地下都市建設事業に邁進する事になるが、この大破壊を契機として一つの組織が出来た。それが「レイヴンズ・ネスト」と呼ばれる、表向きは謎の団体。
レイヴンはACを駆り様々な依頼を報酬と引き換えにこなして行く。そこに理不尽があろうと違法行為があろうと、ミッションを選ぶのはレイヴンであり、責任を問われるのは依頼者ではない。「ネスト」はレイヴンが動きやすいようにACの整備やパーツの提供を行ったり、働きのいいレイヴンを「ランキング」と呼ばれる順位分けにするくらいで、レイヴンの行いや依頼者については全く干渉しないのが原則だ。
レイヴンズ・ネスト本部、俺に与えられた部屋に入ると一つのコンピュータがあった。そこにはレイヴンに必要な情報や、機体を構成するパーツを売買する事ができる「ショップ」の情報が入っていたりする。この端末で操作するだけで依頼を受けたりパーツを購入、売却する事が可能だ。
最初に一通のメールが来ていた。
「新規レイヴンへ
レイヴンズ・ネストへようこそ。
我がレイヴンズ・ネストはレイヴンとなられた方々に、ネットワークを通じて様々なサポートを行っています。
依頼の配信は勿論のこと、機体の修理や弾薬の提供、最新型パーツの販売などがその主な内容となります。また、各自の受けた依頼に関する情報もメールにてお伝えしています。ネストは依頼者にも、また各レイヴンにも一切干渉いたしません。依頼者と間で何らかのトラブルが発生した場合も、我々は関知しません。ご了承ください。
申し遅れましたが、私、あなたの担当となりました『R』と申します。おつきあいが長くなるか短くなるかは、全てあなたの腕次第ですが。
それでは、また。」
という事だ。返信の必要はないだろうと判断し、「ショップ」へと赴く。
自分に与えられた機体は標準的な構成で、良くも悪くも「無難に」仕上がっているのが見て取れた。
先ずは肩に装備されているレーダーと、レーダー機能の付いていない頭部パーツを売却し、レーダー付与の頭部に買い換える。多少性能が落ちるもののこれで資金に余裕が出来た。
今度は主力のライフルだが、これでは攻撃力が心もとない。これも売却し、少し高価な遠距離用ライフルを購入した。この「ショップ」のいい所は買っても売っても値段が同一と言う事だ。
今度は「ガレージ」と呼ばれる場所へのリンクを開いた。
自分の機体の事を色々と決める事ができる場所と言えばそれまでだ。
先ずは先ほどの頭部とライフルを機体に装備させるよう支持を出す。出撃する際にはもう出来あがっているだろう。今度は、機体の外面的な部分を決めなければならないらしい。
名前名を「雷斬」と登録し、機体の色はゴールドと黒を基調にしてカメラ・アイを赤く染めた。
機体の象徴ともなるエンブレムはサンプルの中から適当な物を選び、多少加工しただけだ。
これで、あとはミッションの欄を見るだけである。
二つのミッションが配信されていた。
反抗組織排除 :13000C
不法占拠者排除:14000C
初っ端だけあって安い金額のミッションばかりだ。とりあえず資金を多く貯めたいので、不法占拠者排除のミッションをクリックした。
依頼者 :ザムシティ・ガード
前払報酬: 0C
成功報酬:14000C
前払報酬とは、契約した時点で資金が俺のものになる場合の報酬の事で、依頼内容をこなせなかったり反逆しても返せといわれる事はない。だが、一度契約すると他のミッションは選択不可能になるシステムだ。
依頼者は開発途上都市の一つである「ザムシティ」を警備するガード。
ミッションの内容は、都市化計画を反対する過激派を名乗る市民を排除してくれという事だった。住民との話し合いも和解に達しているためただ暴れる名目が欲しいだけの連中だとガードは踏んでいる。一般市民である事からガードは手を出しにくいので、レイヴンに痛い目を見せてくれと頼みに来たわけだ。
俺は新調したばかりの機体のコックピットに座り、各センサーやエンジンのパネルをオンにしていった。
『戦闘システム 起動』
ネスト本部のサポートを受けザムシティまでACを運ぶ。通信でミッション開始を告げられると同時に、今度は先ほどの機械の合成音声ではなく某カナイミカのようなロリ声の音声がコックピットに広がり、一瞬動揺した。頭部パーツの交換を行った事で機体のメインコンピュータ自体も性能が違ってくるのだろう。
敵MTの数は六機。どこに隠れているのか判らないが、広いとはいえない市街地を散策し、敵と合間見えるのは容易だった。
敵のMTは旧型で、機銃付きの箱に逆間接の足がついているだけの形状をしていた。所々にある柱を影にしながら水平移動と垂直移動を繰り返し、敵の姿が見えたときに確実に銃弾を打ち込む。
数発でMTは爆発を起こした。
機体に旋回をかけさせて広い空間から狭い通路を発見した。そこを陣取るようにして仁王立ちする、先ほどよりも多少接近戦に特化されていそうな人型MTを、あちらの射程外から射撃を繰り返し撃破した。
進もうとしたところに数発の弾丸。敵の発見が遅れていた。
大きく機体を横に流しながらロックオンサイト内に敵を照準する。サイトから敵を出さないように水平移動をしながら敵の銃弾を避け、合間にライフルを打ち込むことで撃破した。
戦闘用ACと作業用を少し改良しただけのMTでは戦力の差は明らかだ。
とはいえ、簡単なミッションだからこそ油断は出来ない。
今度は狭い通路を進むと、左右に空間が広がっている。壁に隠れるようにしていた二本足MTを軽く撃破し、右へと進む。敵は洞窟のようになっている小さい空間の中に隠れ、外に向かって銃弾を放っている。正面からではこちらも甚大な被害を被りかねない敵MTに対し、水平移動をしながら一瞬姿が見えた瞬間にライフルを撃ち、撃破。
最後の敵は中々壁の向こうから姿を現そうとはしない。だが、ACの機動性を舐めてもらっては困る。
機体のブーストを吹かし、一気に壁の上へと到達した。
「チェックメイトだ。」
俺は数発の弾丸を最後のMTの頭上から撃ちつけた。
『戦闘システム 解除』
成功報酬:14000C
特別報酬: 0C
弾薬生産: 3082C
機体修理: 806C
計 :10122C
所持金額:11822C
第三ミッション
レイヴンとしての最初のミッションは、順調に済ませることが出来た。
自室に戻ると、自分の端末に報酬が振り込まれていたので、即座に端末を操作し機体のパーツや武装の強化を図る。
先ずは先ほど使ったライフルを売り払い、速射型のマシンガンに買い換えた。後は機体に初めから装備されていたジェネレータを売り、もう少し高価な物に変える。
機体の運動性能は主に足や全体のウェイトバランスが重要なのだが、その運動性を保つために必要なのは、他でもないジェネレータなのだ。長時間使えるジェネレータでなければ機体のブーストを吹かす事もできない上、エネルギー系武器を使う際にも致命傷になるのだ。
ガレージにて購入したパーツを装備させ、ミッションの配信されているページへ向かった。
所属不明MT掃討 :12000C
反攻組織排除 :13000C
採掘施設奪回 :18000C
当然採掘施設奪回だ。
依頼者 :クローム
前払報酬: 0C
成功報酬:18000C
石油採掘施設を占領するテロ集団「ストラグル」を叩いてくれという事だ。この施設は全く使用されておらず、クロームによる再利用計画が進行し始めた矢先のことらしい。彼らの目的はクロームに対する妨害工作に他ならないのだが、こんな事で工期を延ばしていればテロ集団が付け上がるだけなので、レイヴンによる速やかな撃退を期待だそうだ。
『戦闘システム 起動』
採掘施設の拠点となる塔を中心に、飛行型MT数機が待ち構えていた。
マシンガンを乱射しながら敵を牽制し、接近する。敵の武装は遠距離用ミサイルと、至近距離用の火炎放射器だ。
塔の足を障害物にして、回りをぐるっと回る形で一機ずつ撃破することに成功した。テロ集団と言ってもこの程度だろう。
成功報酬 18000C
特別加算 0C
弾薬生産 3075C
機体修理 493C
計 14432C
所持金額 15754C
ミッションを終えると二通のメールが来ていた。
一つは俺の担当だという『R』から。
発信 R
件名 ストラグル
今回俺が相手をしたストラグルは、反クローム社を掲げている小さなテロ集団だが、武装の充実ぶりは武闘派の「イミネント・ストーム」さえ凌ぐと言われている。彼らの背後には協力な支援者がいるらしい。
今現在、クローム社に対抗しうる勢力といえば「ムラクモ・ミレニアム」社をおいて他にない。
彼らがクロームの勢力を削ぐために組織的な援助を行っているというのは、十分在り得る話だ。という内容だった。
今現在の人類は、企業と言う組織が激しい鬩ぎあいを演じている。これは地下の都市化による工事や運搬作業などの効率化を図るためには、企業の力を借りるのが一番だという事が起因している。
そして、今のところ勢力が目に見えて大きいのがクローム社である。あらゆる分野に於いてその勢力を伸ばし、傲慢な姿勢であるにも関わらず支持者は多い。その次に、かろうじて食いついているのがAC開発で勢力を伸ばしているムラクモ・ミレニアム社だ。この二社の潰し合いが、今も進行中だという事だろう。
そして、二通目はそのクローム社からだった。
配信 クローム
件名 採掘施設事件
「ご苦労だったな。
今後もその調子で頼む。
なかなか、いい腕をしているようだ。
だが、それだけでは生き残れん。
それだけではな。
良く覚えておく事だ。」
偉そうな連中だ。
第四ミッション
レイヴンの受ける依頼はレイヴンズ・ネストを通じて配信されている。
そしてどのレイヴンが依頼を成功させ、各企業や市民の支持を得ているのかを全てチェックし、それを一定の基準の下に数値化し、レイヴンに割り振っている。
この数値が高いレイヴンは「ランカーレイヴン」と呼ばれ、そのレイヴンの駆る機体は「ランカーAC」と呼ばれ、戦場で最も会いたくない存在と恐れられているのだ。
そう、レイヴンは如何なる依頼であろうと、報酬さえ貰えば遂行する事ができる。
これによってレイヴン同士が互いに敵として接触する事も、今のご時勢珍しい事ではない。
現在レイヴンズ・ネストの管理するランキングでトップの座に立つのは「ハスラー・ワン」と呼ばれるレイヴン。そしてその黒と赤で染められた機体の名は「ナインボール」と言う。どんな過酷な依頼も進んで引き受け、そして失敗、敗北を一度としていないレイヴンは、各企業やネスト本部からの信頼も厚いと言う。
そう、レイヴンズ・ネストのランキング表示にはそう書かれている。
事実と表層的な宣伝が食い違っていたとしても、俺が戦う理由に代わりはない。
ナインボールを壊す事。それが真の目的だ。
その為にはヤツに近付かなくてはならない。敵であろうと味方であろうと、今の俺とこの機体では何も出来ないだろう。
俺はいつものようにショップへ向かい、使い古した脚部を売り払い、多少使えそうな物に買い換えた。
そしていつも通りミッションが配信されているページへと向かう。
ランカーレイヴンにもなれば、企業やその要人と個人的なコンタクトが可能になり、自分の端末だけに直接依頼が書き込まれることもある。
それまでは、どんなレイヴンでも受ける事の出来る公共の依頼を受信し、遂行する他はない。
セキュリティメカ排除 : 17000C
依頼者 :フォートガーデン・ガード
前払報酬: 0C
成功報酬:17000C
現在一つの都市として安定を保つ数少ない街、フォートガーデンのガードからの依頼だ。
彼らが管理しているセキュリティメカの保安システムが何者かによって破壊され、各地域のセキュリティメカが暴走を始めたらしい。犯人はまだ特定できないが、とりあえず眼前のセキュリティメカをどうにかしたいので手を貸してくれという事だ。市内オフィス地区の全セキュリティメカの排除が成功条件らしい。住民の避難は終了しているので遠慮はいらないという事だ。
市民が逃げ終わってから依頼を頼むとは、ガードも成長しているという事か・・。
体に馴染んだコックピットに乗り込み、機体各所のメンテナンスが終わっている事を確認する。
問題はない。後は暴走したセキュリティメカを破壊するだけだ。
『戦闘システム 起動』
オフィス地区のセキュリティメカは縦一列になって並んでいるのがレーダーで確認できた。
目の前に移動してきたのにマシンガンを打ち続け、その間にも回避運動をする。
敵の武装は中型のロケットに二発同時発射型のミサイルのようだ。
弾速の遅いロケットは左右の移動を繰り返しながら避け、追尾機能のあるミサイルは引き寄せてから素早く避ける。機体を前進させながらレーダーに映る敵影を正確に照準し、機体の沈黙を確認するまで射撃し続けた。
徐々に近付いてくる敵がレーダーのあちらこちらに映っている。
「ちっ・・。」
かわしきれないミサイルや四方八方から飛んでくるロケットが機体側面や肩に被弾するのがわかったが、意に介さずに殲滅を続けていると、ガードから通信が入った。どうやらオフィス地区のセキュリティメカは全滅させたようだ。
街中のビルや家屋に着弾がないのを確認し、機体のメインエンジンを停止させた。
『作戦終了 戦闘システム 解除』
成功報酬:17000C
特別加算: 0C
弾薬清算: 5700C
機体修理: 262C
計 :11038C
所持金額:20392C
現在のランキング 16
第五ミッション
人類がその生きる場所を地下に移し、既に半世紀が経とうとしている。
しかし、まだ人類はこの世界での安穏を手に入れることは出来でいない。
企業、AC、そしてレイヴンズ・ネスト・・・。
これらが在る限り人は争い戦い続ける事になるだろう。それを作り出したモノの思惑通りに。
争いは憎悪を生み、憎悪は新たな争いを生む。
そしてレイヴンはその争いから生まれた憎悪を担い、この世界を混沌へと誘うのだろう。
俺もその一人に過ぎない。
機体の左腕に装着していたレーザーブレードを、多少攻撃力の強いものに買い換えた。
大分機体も様になってきたが、まだまだ改善しなければならないところも目立つ。
とはいえ、資金に余裕のない俺がやることは一つしかないのだが。
輸送トラック奪回:20000C
依頼主 :クローム
前払報酬: 0C
成功報酬:20000C
地下都市アヴァロン・バレーに向かったクローム輸送トラックが、都市同士を結ぶトンネル「ナッソトンネル」付近で消息を絶ったそうだ。原因は不明だが、積荷の新型毒ガス兵器を狙ったテロリストの犯行である可能性が強いらしい。テロリストにガードをぶつけるわけにはいかない為、レイヴンにトラック捜索を任せるという事のようだ。車両の安全さえ優先すれば妨害するものは全て排除すればいいらしい。
そして事情を知らない一般車も現場を通行するため注意が必要で、破壊してしまった場合は賠償金を成功報酬から引かれるそうだ。
一般市民の安全よりも自らの社の利益の方が大事らしい。
依頼を受諾した後、俺の乗った機体と共にネストの誘導の元、ナッソトンネルへと運ばれた。
レイヴンズ・ネストにより、レイヴンは「依頼」の範囲内で十分にACを操る事に愕くほど忠実なサポート体制が敷かれている。最も、依頼の範囲外でACを使わせない配慮ともとれるが。
俺の機体の最終チェックを完了し、離れていくスタッフの後姿を見届けた後、機体の各センサー類と通信回線を全てオンにした。
『戦闘システム 起動』
薄暗いトンネルは、まだ戦闘の匂いは感じさせない。至って普通の道路だが、至って普通なだけに通行車両も涼しい顔で通り過ぎてゆく。
少し前進したところで、クロームからの通信が入った。
「トラックの積荷は毒ガスです。発見した場合は攻撃しないよう注意してください。」
「了解・・。」
小さく答えて、ダッシュをかけさせた。何事もなければいいのだが・・。
直後レーダーに光る、AC並の敵影。
やはりトラックは何者かの手によって奪われたのだろう。
横に大きな穴が開いており、二車線が平行して造られているのがわかる。
敵が待ち伏せているだろうと心に言い聞かせ、機体を壁から飛び出させた。
ライフルを撃ってくる敵の懐に一気に飛び込み、空中で接触する瞬間にレーザーブレードで一閃する。
炎上を起こすACを横目で見ながら辺りを見渡すが、ここには何もなかった。トラックがあるのはさらに奥のようだ。
機体を百八十度反転させ、少し前進するとレーダーに二機の敵影が映る。恐らくACだろう。
「分が悪いか・・・。だが行くしかない。」
少し斜めにカーブしているトンネルの先を見やると、トラックが見つかった。恐らく目標だろう。
敵がこちらに気付きハンドガンを打ち付けてくるが、トラックを背にして攻撃してくるため反撃できない。
至近距離まで近付いて一機を撃破しようとしたが、避けられた。
出来た隙を逃さずにハンドガンの斉射を喰らい、機体が被弾の衝撃で揺れた。
「くそっ・・・。」
一度距離を置き、敵をトラックから離れるよう誘導する。
そこでマシンガンを打ちつけ、一機を撃破した。残るはもう一機だけだ。
敵もこちらを攻撃してくるため、トラックを背にするわけにはいかない。
お互いに機体の装甲の耐えるところまで正面で打ち合った末、なんとか撃破することが出来た。
「ふぅ・・。」
一息ついた瞬間に、コックピット上部にある緊急用電灯の赤い光が機体内部を照らした。
直後に響く機体の声。
『敵増援 確認』
「ちぃっ!」
操作パネルから離していた手を乱暴に元の位置に戻し、機体を近付いてくる敵影の方向に向けた。
「墜ちろ!」
敵の射程外からマシンガンを撃ちつけ撃破したが、増援は一機だけではなかった。
横をすり抜けて後ろに回った敵ACの俊敏さを呪いながら、機体を旋回させる。敵が不用意に飛び上がった瞬間に時機をジャンプさせ、レーザーブレードでコックピットを両断した。
どうやらトラックは無事なようだ。
『作戦終了 戦闘システム 解除』
成功報酬:20000C
弾薬生産: 2496C
機体修理: 3621C
特別減算: 400C
計 :13489C
所持金額:16381C
現在のランク 16
第六ミッション
ランカーレイヴン。
主にランキング10以内にその名を記載された者はそう呼ばれる。
しかし、依頼を忠実にこなしていくだけでレイヴン同士を比較し、優劣を決めるというやり方は、依頼を確実に成功させて欲しい金持ちならば嬉しい事だろうが、何故レイヴンズ・ネスト本部がわざわざそのような事をするのだろうか。
それは、過去の名残に他ならない。
レイヴンとレイヴンが試合形式で戦い、勝利を修めたものに賞金が支払われる「アリーナ」と呼ばれるレイヴンズ・ネストの主催するイベントの様な物があった。
それは年末年始途切れることなく行われ、アリーナに参戦したレイヴンは自分より順位が一つ上の相手と戦い、勝てば順位が上がる。勝ち進めば報酬も次第に巨額になり、頂点に達したものは歴代のアリーナを制覇したレイヴンにその名を連ねる事ができた。
しかし数年前起こった事件をきっかけに、アリーナを主催する地域はほとんどなくなった。
アリーナチャンピオンである一位と、その座を狙う二位の決戦前夜に、チャンピオンのレイヴンが何者かに暗殺されたのだと言うのが専らの噂だ。
血腥い事件と共に、過去の栄光は忘れ去られていった・・・。
そして、現在のレイヴンは企業やガードの手足となって戦う存在でしかなくなった。
機体の機動力を持続させる為に機体のジェネレータを、ショップに並んでいる一番高価な物に買い替え、早速依頼を引き受けた。
依頼主 :ムラクモ・ミレニアム
前払報酬: 0C
成功報酬:AC用パーツ
クロームの砲台施設破壊が依頼内容だそうだ。砲台の建設地がムラクモ社の領域とのギリギリに位置する為に、計画発表当時から再三注意したにも関わらず無視を続けたらしい。
クロームは自領域の安全確保の為だと見え透いた言い訳をしているが、その狙いが将来の軍事侵攻にあるのは自明の事だという。
今回は報酬はなく試作したAC用パーツを提供するらしい。
依頼を受諾して直に、ムラクモ社の物らしいAC輸送用のヘリが本部まで迎えに来た。
先の買い物で資金がゼロに近くなっていたが、機体の整備が終わったのを確認した後、俺は機体のコックピットに座った。
数分すると、澄んだ声の通信士の声が聞こえくる。
「作戦領域に到達しました。AC投下と同時に離脱します。」
ガチャンと言う音が上方で聞こえたと思った瞬間、重力が時機を地面へたたきつけた。
『戦闘システム 起動』
ムラクモのヘリは既に敵の砲撃の的になっており、砲撃が機体の各所を揺すっているのが見えた。
だが、今集中しないといけないのはクロームの砲台を破壊する事だ。
敵航空部隊と思われる円形型の飛行機の砲撃を避けさせながら、機体を前方に突っ込ませる。
砲台の数は4。四角く隆起した小さい砲撃施設だ。
その角に一機ずつ設置されている砲台を、周囲をグルリと回って撃破すればいい。
幸い、遠くの砲台からは死角になる位置で移動できる。どうやらクロームは地上からの攻撃は想定していなかったようだ。機体に若干の被害を受けたが、四つの砲台を撃破することに成功した。
『作戦終了 戦闘システム 解除』
成功報酬: 0C
弾薬清算: 2280C
機体修理: 2133C
計 : 4413C
所持金額:−3732C
赤字だ・・・。
軽い頭痛に耐えながら自室のベッドに倒れこもうとしたが、メールが届いている事に気付き体をパソコンの方に向けさせた。
発信:ムラクモ・ミレニアム
件名:礼状
「ご苦労様でした。
速やかに事態を打開していただき、感謝しております。
クローム社の横暴ぶりは日々激しくなるばかりです。我々は彼らのような不当な力に屈する事なく、戦わなければならないのです。
では、また何かありましたら、よろしくおねがいします。」
次何かある時はお前らがターゲットかもしれないのにな・・・。
現在のランク 16
第七ミッション
レイヴンといえば、一般大衆のイメージで言えばACに乗って戦場を駆け巡り、時たま自分達の所へ姿を見せる、謎の集団だろう。
だが、依頼を受けていない状態のレイヴンはただ暇を潰しているだけの人間と同じだ。
俺はレイヴンズ・ネスト本部を離れ、近くのザムシティへと足を運んだ。
ザムシティはまだ工場施設のようなモノが街中に溢れ、喧騒も市民の楽しそうな物ではなく、現場で張り詰めた声を出している工事の人間によるものばかりだ。
ただそれ以外の人がいないと言う訳ではなく、スーツを着た人間やドライブに来ている若者がいないわけではない。こじんまりとして生気の感じられない街の天井を見上げると、一部がむき出しになったパイプやボルトなどが見えた。まだ開発途上とはいえ、機能だけを優先した工事なのが見て取れる。
地下の世界は愕くほどの速さで復興を遂げ、現在も拡大し続けている。
それに伴う争いと共に。
すぐ後ろで轟音が響き渡ったとわかったのは、コンクリートや地下特有の湿っぽい空気が飛んできた後だった。
どこから湧き出たのか、住民らしき人々がぞろぞろと悲鳴を上げながら走っている。
自分にぶつかって逃げていく人間に事情を聞こうと振り返った先に見たのは、半壊したビルや地面に倒れて動かない人。
そして・・。
「MT・・・?テロか?」
ここは先日の依頼で過激派住民の鎮圧を引き受け、戦った場所。
暴れているMTも見覚えのあるものばかりだ。
「住民を・・・」
自分の拳がおかしな音を立てるほどに強く握り締められている。
しかしながら、今の自分にはどうする事もできない。
脳裏に移るのは記憶の断片。
逃げ惑う人。焼けた鉄の匂いと悲鳴が包む空間に倒れる家族。
目に飛び込んで来たのはあの時と同じモノだった。
「9・・・・。ナインボール・・・?」
赤と黒の機体。肩には伝説のレイヴンのトレードマーク。
鮮やかに地面を流れ、正確無比な射撃で目標を沈黙させて離れていくACを、俺は歯を食いしばりながら瞬きもせずに睨みつけていた。
ナインボールが撃破したMTが炎を巻き上げ近くの建物を巻き込んで爆発を起こした。
きっと、どこかの家族が巻き込まれたのだろう。
あの時のように。
レイヴンズ・ネスト本部に戻ると、自分の機体を見上げた。ひっそりとたたずむ巨人を暫く見つめた後、自分の部屋へ向かった。
ミッションを見てみると、依頼遂行済と書かれた依頼を見つけた。それは不法占拠者再排除と言う題をしており、ザムシティでの先の集団を鎮圧してくれと言う依頼だった。前回レイヴン・・・恐らく俺にやられた為に逆上し、この前のレイヴンを出せと喚いていたそうだ。ガードのほうはそんな事情などお構いなしに募集をしていたが・・。そこにアイツが出てきたという事だ。
ふと、自分の所持金額を見ると、資金がマイナスの表示になっている。先ほどの事件で忘れかけていたが、俺は前回かなりの借金をしてしまっている。どうにかして返さなければならない。
ショップへ赴き、前回の依頼で報酬として譲歩されたAC用試験型軽量脚部を売り払うと、借金を返済し余りあるほどの金が出来た。ムラクモ・ミレニアムがACを中心として工業系企業を発展させているのは承知だったが、やはりAC用パーツを製造する技術も並大抵ではないのだろう。
今度は機体の武装強化を図る。マシンガンを売り、できた金を使い高級なパルスライフル型エネルギー兵器を購入した。
エネルギー兵器とは、機体のジェネレータから直接エネルギーを引き出して発射する兵器で、ジェネレータのオーバーロードやブースターユニットの使用不能などに陥る危険性が高いが、総じて攻撃力が高く、実弾の物と違って弾薬費がかからないのも特徴だ。
これで、資金不足が解消されるといいのだが。
ミッションを配信されているページに行くと、新たな依頼が届けられていた。
依頼主 :アイザックシティ・ガード
前払報酬: 0C
成功報酬:22000C
テロ組織である「イミネント・ストーム」が、アイザックシティの下水道内に潜伏し、支部建造を目論んでいるらしいという情報が入った。
イミネント・ストームは過去にも何度かこの街でテロ行為を行い、ガードとは因縁の中だ。その奴らが支部を建造させるのを黙ってみている訳にはいかない。
だが、我々の武装だけでは心もとない。そこでレイヴンに協力をお願いする。
既に何人かのガードが向かったが、彼らだけでは危険すぎる。
作戦目標は二つ、ガード部隊の援護ともう一つはテロリストのリーダーを撃破することだ。もしガードがやられた場合は報酬から一体につき1000Cを引かせてもらう。
レイヴンの活躍に期待する。
だそうだ。ガードを守りきれなければ報酬から引かれるというのは辛いが、致し方ないだろう。
機体のメンテナンスを終了させ、新しい武装での不安と一緒にアイザックシティへ向かった。
『戦闘システム 起動』
下水道と言っても陰気な場所ではなく、どこかさっぱりとした印象を受けた。狭いから余計に電灯の白い光が辺り全体を照らしている。
敵のMTもガードのMTも、基本的には同じ物だが、カラーリングパターンだけが異なっている。目標は白いMTだ。
一機、また一機と、敵の機銃による攻撃を避けながらレーザーブレードで横断し、通路の影から打って来るものはパルスライフルで応戦し、撃破した。
武闘派テロリストとして名高いイミネント・ストームだが、これだけの規模しかないとは拍子抜けだ。
進んでいくと、非常用の赤い電灯で照らされた部屋があった。
中には数機のMTが打ち合っている。
「ガードか?」
通信回線を開きながら機体を前進させるが、直後ガードのMTは炎上した。
「レイヴン、この先に敵のリーダーがいる。き、気をつけてくれ。」
そういい残し、MTは灰になった。
ガードと打ち合っていたMTをレーザーブレードで斬り、呼吸を整えてから扉を開いた。
機体を少し前進させると、コンピュータが反応する。
『目標確認 敵MTです』
今度の機体は色だけでなく、武装も戦闘用MTに負けないほど高火力なものになっているようだ。少しの間柱を挟んで対峙していたが、意を決して飛び出し、ブレードで一閃。勝負は一瞬で決まった。
『作戦終了 戦闘システム 解除』
成功報酬 22000C
特別加算 9000C
機体修理 4532C
特別減算 1000C
計 25468C
所持金額 32636C
現在のランク 16
第八ミッション
武装もそれなりに充実し、贅沢を言わなければ機体はそれなりにキャパシティを手に入れることが出来た。
この後の金の使い道はと言うと、ミッションに見合った武器や装備を整える事だ。
つまり、対MTなのか、長時間戦闘なのか、という状況に応じて機体のパーツを選んでいく事で、迅速且つ安全に依頼を成功させる事に集中するわけだ。
配信されている依頼は、これだった。
依頼主 :ムラクモ・ミレニアム
前払報酬: 7000C
成功報酬:10000C
アイザックシティのとある発電所で、保安システムのトラブルから作業用無人機が制御不能に陥った。
大部分はその捕獲もしくは破壊に成功したが、一部が発電施設内部に入ってしまっているらしい。
まだ大きな被害はないものの放置するわけにはいかないのだが、場所が場所だけに迂闊に手出しが出来ないそうだ。依頼内容はそのMTを破壊する事だが、発電機に衝撃を与えると大爆発を引き起こすので、衝撃を与えるなという事だ。
発電機を爆発させてしまった場合は報酬から引かれてしまうらしいが、作業用MTは全く戦闘能力を持たないので慎重な行動を頼む、という趣旨だった。
これなら、特に大きな装備の変更は必要ないだろう。
端末での契約を済ませると、部屋に設えてある冷蔵庫からサイダーを取り出し、一口飲んだ。
「ふぅ・・。」
口の中に広がる強い炭酸の苦味を噛み殺しながら一度溜息をつき、雷斬の係留されているデッキへと足を向けた。
『戦闘システム 起動』
ミッション開始直後に、ムラクモから通信が入る。
「レイヴン聞こえますか。
発電機に攻撃を加えると爆発する危険性があります。気をつけて行動して下さい。」
狭い通路からドア一枚を開けると、巨大な空間に所狭しと発電機が並んでいる。
目の前にはターゲットのMTが数機。バチバチと火花を散らし、高圧電流が流れているであろう電線が天井近くに張り巡らされている。
「・・随分とプレッシャーのかかる任務だな・・。」
MTの小さな爆発でも、有爆してしまったら大惨事になってしまう。
慎重にMTに接近し、近くに発電機が無いのをもう一度確認してからレーザブレードでMTを破壊していく。
エネルギーライフルは誤射の事を考えるととても使う気にはなれなかった。
発電機の近くにいるMTは機体で体ごと押すようにして無理に離れさせ、撃破した。
「これくらいか・・・?」
既に五機は破壊しているはずだ。
ふとレーダーに目をやると、左右に展開するターゲットを表す点滅が見えた。
どうやらまだ終わりではないらしい。
部屋を突き当たりまで進むと、左右にそれぞれ広がるドアが見えた。
三つのフロアにいるMTを全て破壊しろという事か。
どこも似たような作りの部屋で、慣れてしまえばどうという事は無かった。
しかし、発電機の有爆という事態だけは頭を離れず、MTを掃討し切った時には体全体から汗が吹き出ていた。
『作戦終了 戦闘システム 解除』
成功報酬:10000C
計 :10000C
所持金額:49636C
現在のランク 13
第九ミッション
レイヴンが戦う理由はそれぞれだ。金のためや名誉を得たいがため、さらには物を破壊したいからという理由でレイヴンをやっている人間もいるほどだ。
しかし、レイヴンがどのような思想を持っているとしても、依頼を成功させるという一点に於いてはどのレイヴンも同じである。
依頼者からすれば、依頼を確実にこなしてくれればそれでいいのだ。
逆に失敗さえしなければ後は何をしようと自由だ。
レイヴンが簡素な部屋に追し込められている状態でも、街中でのんびりと過ごしている間にもそこかしこでレイヴンを必要とするような事件が起こり、レイヴンはそれを自己の欲望を満たすために処理する。
それが今の地下世界に住まう人間の姿だ。
企業とAC、そしてレイヴンズ・ネストが必要不可欠であり、そしてその大部分を占めている。
俺は、「ヤツ」に近付かなくてはならない。
この世界を破壊するために。
依頼主 :地球環境再生委員会
前払報酬: 0C
成功報酬:25000C
アイザックシティ南西の地上に残存する旧軍事施設に侵入しろというのが今回の依頼だ。
最近は放置されていたのだが、依頼主が手に入れた資料によると大破壊以前は試作兵器の実験施設だったらしいという事が判明した。
そしてもし企業がそのことを知れば、施設を巡る争いが起こるのは目に見えている。
至急正確な現状を確認すべく調査隊を派遣したが道中トラブルに巻き込まれ、停止していたセキュリティシステムが始動し、セキュリティメカも活動を始めたらしい。
どうにか一階の奥まで帰還してきたが、そこのゲートを開く事ができなくなってしまっているという事だ。
セキュリティメカはなんとか撃退しているらしいが、いつまでもつかわからないので救援に向かってくれだそうだ。
企業間の争いを避け、過去の遺物を保護したいという建前なのだろうが、どの企業よりも早く自分達の物にしたいだけじゃないのか?
しかしながら、依頼主にケチをつけようとやることは一つしかない。
人命もかかっていることだしな。
依頼承諾をしてから、パソコンの前で一人腕を組んで考える。
敵部隊は大破壊以前の、実験施設のセキュリティメカ。生半可な装備では太刀打ち出来ないかもしれない。
だとしたら機体の武装を強化するべきだろうか。それとも、セキュリティメカといわれるほどだから火力が半端じゃないかもしれない。防御力の優れた装備に買い換えるべきだろうか。
20秒ほど考えたが、現状ではどちらともいえない。
武装を少しでも強化しつつ、持久戦にも耐えれるよう若干防御力を向上させるしかないか。
安全策と言うわけだ。
ショップへ赴く。ここは商品がパーツごとに分けられており、いらないパ−ツには目を通す必要がないつくりになっている。俺は[ARM WEPON]・・・つまり、手に装備させる武装を見渡した。
めぼしいものはない。というのも、今装備させているパルスライフルは、店で買えるものの中では群を抜いていい物だからだ。といっても、肩に装備させるための強力な武器を買うほど金があるわけでもない。
仕方なく、左手用のレーザーブレードを売り、店で売っている中で最も攻撃力の高い物を購入した。
余った金は、装甲強化に回す。雷斬を受領して以来全く手をつけていなかった腕部パーツを売り、軽量で防御力もなかなか優れた物に買い換える。といってもやはり値は張るので、そろそろ金もなくなりそうだ。
今回はこの武装で行くしかなさそうだな。
自室を出てからACが待機してある部屋までは、中々面倒臭い道のりを経て行かなければならない。
俺はレイヴン達が生活している部屋の前を次々に通り過ぎ、突き当たった所にあるエレベーターに身を任せ、人口の地面に足を付けた。
この世界では「地下」という概念はほとんどない。掘り進んだ先が常に「1F」であり、地上に近付くにつれて階が増していく。地上で生活していた頃の人間であれば、感覚的に慣れるまで時間がかかってしまうだろう。
1Fに付けば大通りを直進するだけだ。
広大に広がっているはずの空間は、AC一機ごとに狭い区画に分ける為の仕切りのせいで、ひどく窮屈な場所に思えた。俺はすっかり暗記した自機の係留されているフロアへと足を向けた。
「今日も頼むぞ、雷斬。」
コックピットに乗り込むと、機体と一緒に足を固定している地面の一部も動き、レイブンズ・ネスト本部の外へと運ぶ。
旧軍事施設とやらに付くまでは、軽い仮眠も取れそうだな。
「・・・では、お願いします。」
意識に聞きなれない男の声が入ってきたと思うと、俺の体は軽い浮遊感に襲われた。
はっと目を見開くと、上にどんどん流れていく人工的な壁。
どうやら、寝入っている間に細い竪穴に放り込まれたらしい。
パネルやレーダーは全てオンになっているのを確認し、メインエンジンの回転を上げさせた。
『戦闘システム 起動』
機体の足が地面を見つけると、目の前には小さな部屋が左右に所々見える一本道が待ち構えている。
レーダーには早くも敵の機影が映し出されている。大破壊以前のセキュリティメカとはどのような物なのだろうか。
小さな部屋に機影が数機見える。機体をダッシュさせて突っ込むと、居たのは小さい、亀の出来損ないのようなメカだった。
こちらを見つけると同時にパルスライフルを撃ってきたが、レーザーブレードの一撃で四散してしまう。
どうやら俺の杞憂だったようだ。
しかし、これだけの小型兵器にも関わらずエネルギー武器を内臓しているとは、やはり旧世界の化学力は今とは比べ物にならなかったのだろうか。
だが、そんな事を考えるよりもやらなければならない事がある。
俺は敵セキュリティメカを次々と撃破し、奥へと機体を猪突させていった。
下に降りる坂状の道を進んでいくと、どこからか通信が聞こえる。
「レイヴンか。助かったぁ・・・。」
恐らく地球環境再生委員会の派遣隊だろう。どうやらこの近くにいるようだ。
安堵した声を聞くに、相当無理をしてきたのだろうとわかる。
「ゲートのロック装置を破壊してくれ。それでゲートが開くはずだ。」
今度は先ほどとは違い、きっちりとした口調でいかにも仕事をしている風な男が命令し、通信回線が切られた。機体のレーザーブレードでゲートの横にあるロックを破壊すると、ゲートがゆっくりと開いた。
ふと思ったが、俺がこのセキュリティメカの大群を倒してここに来なければ、ゲートが開いたとしてもこのお世辞にも戦闘用とは言えない車両が生き残れたのかと言うと、その限りではなかっただろう。
『作戦終了 戦闘システム 解除』
成功報酬:25000C
特別加算: 7600C
機体修理: 9034C
計 :23566C
所持金額:31302C
ミッションを終了させ自室に戻ると、一通のメールが届いていた。
発信:R
件名:地球環境再生委員会
彼らがその名を知られるようになったのはごく最近の事で、荒廃した地上世界のの再生を活動目的として掲げており、構成メンバーの中には世界でも指折りの科学者が名を連ねているらしい。
ただその実態については不透明な部分も多く、何か特別な目的を持った集団なのではないかという噂もある。
という事だ。奴らの事を信用しすぎるなと言う警告だろうか。
現在のランク 13
第十ミッション
人類がその生息域を地下に移してから最も世に浸透したのが、企業やレイヴンズ・ネストよりもテロリストという言葉だった。
世界中でテロリストに分類される破壊活動や重犯罪は、日常茶飯事と言ってもおかしくはないくらいに増加している。
企業という組織から横流しされた、或いは奪った兵器をテロリストが使い、それを鎮圧する為に破壊した兵器の部品を持ち帰りジャンク屋を開く人間も出てくる。
こうして、世界の混沌はなくなることが無かった。
レイヴンに要請される以来も、ほとんどはテロリストの鎮圧が主である。
謀殺や無差別破壊などは、本来レイヴンがやるべき事ではない。
しかし報酬さえあれば何でもするのがレイヴンという職業だ。
依頼主 :アイザックシティ・ガード
前払報酬: 0C
成功報酬:23000C
先ほど市街地にテロリストと思われるMT数機が出現し、周辺の建物に対して無差別な攻撃を加え、逃走したらしい。急行したガードがそのうちの一機を立体駐車場に追い込んだが、駐車場には大型の入り口が一つしかないので迂闊に手を出せない。ガードは他のテロリスト一味も追っているため手が回せない状況なので、レイヴンに排除を依頼してきたというところか。
分が悪くなったらすぐレイヴンに頼むってわけか。こちらとしてはこんな上手い話はないのだが。
駐車場には市民の車両もあるため破壊すれば罰金を取られてしまうそうだ。シティやガードの不注意で起こった事故の皺寄せが来ているだけのような理不尽さも感じたが、依頼内容と報酬額を考えると悪い話ではないだろう。
俺は依頼を承諾し、いつものように雷斬のコックピットへと向かった。
『戦闘システム 起動』
さて、ガードから配信されたデータではMTは戦闘用のようだが、高性能とは言い難かった。
地面に接触する部分を足ではなくタイヤにしているようだ。コックピットからタイヤを先端につけた足が何本も出ており、まるでタコのような概観をしている。
フロアへ出るとこちらに気付き発砲してきたが、恐らく機関銃のような攻撃力のない武装しかないのだろう。遠距離から機体を掠めていく弾丸から意識を離し、敵MTを照準しているカメラを睨みつける。
トリガーを引きライフルを撃ったが、駐車場の強度を増加させるために造られた柱に当たり、無駄玉になった。
天井も低く視界も悪いため、用意に始末は出来ないかもしれない。
少しの間打ち合いを演じていたが、ふと気がつくとレーダーの反応は自分より下。つまり下階に移っていた。
「畜生、アイツっ。」
慌てて機体にダッシュを掛けさせて、MTを追う。下のフロアに出ると既に破壊された車両がいくつか目に入ったが、それどころではない。MTはまた下層へと逃げるようだ。
「させるかよ!」
機体を下の階へ通じる唯一の入り口に滑り込ませ、MTが通れないよう塞いだ。
狭い通路の中で衝突する時機とMTだが、意に介さずにレーザーブレードを振り続けた。
敵MTの頭部に当たる丸みを帯びたコックピットを一閃し、MTは炎上した。
『作戦終了 戦闘システム 解除』
成功報酬:23000C
機体修理: 3133C
特別減算: 800C
計 :19067C
所持金額:50369C
任務を終えレイヴンズ・ネスト本部へ戻ってみると、自室のパソコンに一通のメールが届いている。
レイヴンズ・ネスト直々のメールに何かと思えば、ただの新規パーツの宣伝だった。
ショップに新たに並ぶ物だそうだ。
俺はさっと目を通してから、ベッドに横になった。
現在のランク 13