僕の今生きている時間はとても重苦しい。

流れるのがひどくゆっくりで、しかし、残された時間は後わずかでしかない。

それは、頭の中で組み立てられる物事の推移を考察する場合には、とても重苦しい。

短時間にやらなければならない事が多すぎる。しかし、時間はひどくゆっくりと進む。

それは残酷な事だ。ひどく、残酷な事だろうと思う。

いつからこうなのだろうか?

子供の頃などは、よく夏休みの宿題の定番である読書感想文の原稿用紙を前に、いつも頭を悩ませていた。

そして、数時間もすればなんとか自分でも納得の行く出来になり、真夏の日の光が差し込む家で

残り僅かの夏休みを満喫する。

それで、その夏はお終いだった。

思えば、その薄っぺらい紙一枚こそが、僕の夏休みのみならず

一年という単位を区切る儀式の様になっていた。

どこからか聞こえてくるセミの声を聞きながら、読んだ本の内容を必死に思い出す。

上手い言い回しでも思いつけばしめたもので、後は筆が進むままに文章を書き殴るだけだ。

そうやって、一字一字、一枚一枚の読書感想文を書き終える事ことこそが、僕の人生の節目である。

楽しい事も、嫌な事も、懐かしい匂いも、綺麗な太陽も、みんな一枚の紙になってしまう。

中学校にあがって、読書感想文という宿題があまり出なくなったのは少しショックだった。

別にマイナスな意味ではなく、衝撃を受けたのだ。

それが何を意味するのかも判らずに、夏の終わりはしんどくて、寂しい感じがした。

話がどこか判らない方にずれてきたけども、なんと言うか

今の僕は、そういう時間の流れを把握する能力がほとんど機能していないのではないだろうか。

いつの間にか、世俗と自分とを切り離してしまっている。

気がつけば、十月。

僕は、今とても忙しい。

何が忙しいのかと聞かれれば、やりたい事が出来ないという事だ。

遊びたいワケでもなく、休みたいワケでもないのに、それが出来ない。

強要される自分の流れに乗っているだけの状態なのだ。

そこから抜け出す方法は、凄く単純で、簡単で、気持ちのいい事だが、それが出来ない。

出来ないのは自分を甘やかしているだけなのだろうと思う。

やろうと思えば、今すぐにでも出来るはずなのに。

今やらないといけないはずなのに。

それが出来ないのは

そう、自問自答。

答えも、どこが間違っているのかも、何が判ってないのかも理解ってる。

うつむいて、絶望して、ため息を吐いて、

そんな事しか出来ない。

時間は今も、刻一刻と過ぎ去っていく。

それは考えようによっては、物凄いスピードで人間の大切な物を奪っていく瞬間の連続だ。

そして、何物にも代え難い幸福の連鎖の途中かもしれない。

今、こうして生きている一瞬の、数え切れないほどの連続は、僕に何を与えているのだろうか。

僕はこの一瞬でさえも無駄に出来ない状況であるはずなのに、動けない。

動こうとしない。

いや、動けない。

動かない。

一日は二十四時間と言う単位で区切られている。

その二十四時間という瞬間の連続は、とてつもなく少ない時間でしかない。

少なくとも、今の僕には、途方もない程短い。

そんな二十四時間がたったの三十余回で一月。その三十余の日が12度沈めば一年が経つ。

僕はどうして、無駄な時間ばかり過ごしているのだろうか。

ヒトに残された時間なんて、物凄く短い物であるはずなのだ。

無駄にする事は、出来るものではない。

しかし、今僕は目の前に現実として見える壁すらも通り越して、見まいとしている。

何をやってるんだ。

急ぐことでもない。

あせることでもない。

でも進まないのは絶対に駄目だ。

唐突に現実に目覚めた瞬間、それは感動的でもあるけど、凄く不愉快な瞬間でもある。

僕は、気がつけばもう与えられた時間なんていうものは一切なくなっている。

やるべき事をやらなければならないのだ。

昔みたいに、真っ赤な太陽の下、友達とはしゃいで、走り回って、喧嘩とかもして

生きているなんて自覚もせずに生きている夏。

読書感想文なんて物を必死に忘れて遊んでいる夏なんて、もう二度とは訪れないのだろう。

僕は、縛られたられた人間だろうと思う。

自分に。

周りに。

過去に。

そして未来に縛られて

『今』こそを生きる僕は、誰も見えない。

自分でさえも。

嫌だ。

面倒くさい。

もっと、自分の時間が欲しい。

まだ、子供でいたいのに・・・。

そういう意識が、僕の邪魔をする。

十代は多感な時期だと言う。

もし僕が歳を取って、こんな猪口才な事を吐けなくなったりもすれば

それはそれで、いい気味だ。

僕はもう立ち止まれない所まで来たのだから。

自分が登り続けているのか、落ち続けているのかは判らない。

でも、後は進むしかない。

僕に与えられた時間は少ない・・・