五月三日
子供の頃から一緒になって遊んでいた
たまには一緒に旅行したこともあったね
本当は別に親しいというわけでもなかったけど
でもやっぱり心の底から親友だって言えるのは お前だけかもしれない
意地張り合って喧嘩した事も 無理矢理仲直りしようとした事も
互いに嫌になるようなことも一杯あった
でも 今は全部謝らせて欲しい
「18歳になったおめでとうも言ってなかったね、おめでとう」
いつかの溜息よりもずっと小さな声で囁いた
汚らしいシーツの上でうっすらと目をあけているお前に聴こえただろうか
もう手も動かさない目も開かない口も開かない
軽く握ってみたあったかい手と ただ大きく上下する胸だけが俺に教えてる
まだ生きてるんだって事
勝手な都合で愛想つかされた事も 優しさを忘れて食って掛かったことも
お前を傷つけるようなことも一杯あった
ただ 今は全部謝らせて欲しい
子供の頃無邪気に笑いあってた俺とお前
永遠なんてないってその頃は考えもしなかった
いっつもずっと傍にいたけど
お前だけがいなくなるなんて わかるわけもなかった
いつしか大事な事を忘れ俺はお前の事も忘れようとしていた
お前が俺に言いたかった事も聞けやしなかった
だけど 今は何も言わないでくれ
辛いことも幸せな事も乗り越えてここまで来たんだ
涙ぐむ視界の中でぼんやりと考えた
時たま無表情に肩をひくつかせるお前に届くだろうか
何も言えないで閉じこもった無感情な日々
薄暗い部屋の中 一人何も言えずに立ち尽くしている俺がいる
今度こそ サヨナラなのかな
お前につけられた傷も 数え切れないくらいの思い出も
今はもう全部忘れるから
さぁ安らかに おやすみ
人の誕生日もろくに覚えやしない俺だけど
今日と言う日はきっと心に刻もう
俺はお前を忘れやしないから